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おそらのうえで。

おそらのうえで。

*最後の日*



君に会える最後の日。

そんな日でも
君はいつもと
変わらない。


*最後の日*


「なぁんか、あっという間だったね」

式を終えて
教室に戻る。

黒板にでかでかと書かれた

『卒業おめでとう』

の文字を見て
みんなで笑った。


今日が高校生活
最後の日。


あたしにとっては
君に会える
最後の日。


「3年って長くて短くて
 いろいろあったようで
 でもいざとなると思い出せないや」

そうつぶやくあたしに

「それはお前の記憶力が
 危ういだけなんじゃないの?」

後ろから声をかけたのは
君だった。


「ひっど。
 そういうあんただってどうせ
 全部鮮明になんか覚えてないくせに」


最後だって言うのに
いつもと変わらないやり取りが
うれしいようで
なんだか寂しい。


「覚えてるよ。
 たとえばお前と席が
 隣だったこととかさ」


そんな君の言葉と
君の笑顔に
きゅんときた。

君とのことは
あたしだってちゃんと
覚えてるんだから。


高校2年の夏休み明け。
課題テストで
最悪な結果を出して凹む私の隣で
あたしよりも悪い結果の君が

「こんだけ悪い結果でたら
 次はいい結果にしかなんないって
 …そう思うよな」

そう言って笑った。

「…がんばろうとは思うよね」

二人でお互いの結果のぞきあって

「「その成績はない」」

って笑いあったっけ。


それがあたしと君が
初めて言葉を交わした日。


同じクラスにいても
接点のなかったあたしたちが
それから後
意気投合して
仲良くなるのに
そんなに時間は
かかんなかったっけ。



「今日であんたの顔見るのも
 最後かぁ」

君の顔を見上げるあたしに
君はでこぴんして
得意げに言う。

「恋しくなるでしょ、
 俺に会えなくなると」

悔しいけど当たってて
でも悔しいから強がる。

「あほらし」


君に恋をして
いつも一緒にいることが
すごく自然なことで
明日から君に会えないって
想像つかないけど

まだ伝えてないことが
ココにある。



「ほんじゃぁな」

何もかもが終わって
最後に君は
いつもと同じ笑顔で
いつもと同じ挨拶で
ひらひらと手を振って
教室を後にする。


ねぇ
君はわかってるの?
もう会えないんだよ?
今日が高校最後の日。
君とあたしは
明日からはもう
ココにはこなくって
もうクラスメートでもなくなる。

春からはお互いの
新しい生活が始まるの。


ねぇ、それだけなの?
「がんばれよ」
とか
「またな」
とか
「たまには遊ぼうな」
とか

なんかないの?



気がつけば
ぼろぼろ涙があふれてて
君の背中を追いかけてた。


「待ってよっ…」

人ごみの中
君の制服のすそをつかんで
涙をぬぐって
とびきりの笑顔で
振り返る君を見上げた。


「あたし君が好き」


どんなに笑顔をつくっても
君を見ると
涙があふれる。


君のことが見れなくて
うつむくあたしの頭上から
君の笑い声が
聞こえてくる。


「知ってるよ、いわれなくても」


君の言葉に驚いて
あふれてた涙も
自然ととまる。


「それに最後じゃないじゃん。
 連絡とれるんだし
 会いたいときはあえるっしょ。 
 別にココでしか会えないわけじゃないし」


泣いてた自分が
恥ずかしくなる。


「こぅ…卒業して何日か経って
 恋しくなったくらいに
 どっかーんって会いに行こうと思ってたのに」


いつもの調子の君に
なんだかむかっときて
君の足を
思いっきり
ふみつけた。


そういえば君は
そういう奴だったっけ。


人が真剣に悩んでても
君はいっつも
ふざけてて。

でもそんな
ふざけた君を見てたら
悩んでる自分が
ちっぽけに思えてくる。


「とりあえずクラスメートは卒業」


卒業証書の筒で
あたしの頭をたたきながら
君は笑う。


「恋人入学ってことで…
 まずは手など
 つないでみとく?」


たくさんの人のいる中で
恥ずかしいのもあるし
うれしくて照れくさいのもあって
君の手を払ったけど


ねぇ
口では堂々としながら
君の耳
まっかっかだよ?


ねぇ
君のふざけた態度は
照れ隠しなの?


ねぇ
ちょっとだけ
手ぇ
つないじゃおっか。



ねぇ
今日からまた
よろしくね。






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